予備知識なく開いてから、ほんの少し後悔した。

ライオンのおやつ ハードカバー表紙

「ライオンのおやつ」 小川糸 著

最初にお読みください。
あおましいろが読書備忘録をつける理由↓
【読書備忘録】はじめます。

あおましいろとこの本の出会い。

長女にお勧めの本を探したくて立ち寄った、古本屋さん。
本屋大賞受賞作品とノミネート作品の棚で出会う。

読了までにかかるだいたいの時間。

読書スタイル:すきま時間に少しずつ読み進めるスタイル。
読了までのめやす時間:約3時間程度。
やさしい、消化しやすい文章。

気になるキーワード。

アワトリス氏。

六花(ろっか)。

人生の醍醐味を味わってください。

「私ね、死って、最大級の・・・」

感動する心。

「ごちそうさまでした。」

読了後バロメーター ※独断と偏見の5点満点方式。

・爽快な気分  1(主人公よりに感じるなら4でも5でもいいかも)
・前向きな気分  1
・アドレナリンが出まくっている気分 1
・ノスタルジックな気分  4
・深刻な気分  3
・おなかいっぱいな気分  4(ふくふくとみぞおちあたりから湧き出てくる何か)
・居住まいを正したくなる気分  3

感想文

この本が手元に来たのは、つい先週のことです。
本との出会いはずいぶん前ですが、諸事情で最近はもっぱら図書館にお世話になっているので、予約待ちに並んで、順番が来たのが先週だったわけです。

さっそく表紙を開くと、そこには帯のうたい文句が貼り付けられていました。

帯に目を通して、「ああ・・・」と。
寸の間、胸がつかえます。

「人生の最期」、「ホスピス」から連想する「病院」という場所。
「病院」を思うと、いまなお整理がつかない過去の自分の体験が思い起こされるので。
ドラマも、24時間テレビも、「闘病」を特定の演出で表現してあるものは、極力避けてきたくらいです。
予備知識なく本を開いて、少し後悔した理由がこれでした。

一瞬だけ、読むかどうか悩みましたが、
ものがたりがはじまる瞬間の魅力にはかないません。
結局すぐ読み始めました。

そうして今。
読了して少し経ちます。
感想を言葉にまとめようとして、著者・小川氏の配慮に、大変救われたのではないかということに気がつきました。
理由は割愛しますが、「病院」も「闘病」も得意ではありません。
そういう怯えすら、小川氏に見透かされていたかのようだと感じます。
言葉尻、行間、登場人物の表情・・・
過去の想いがどこからフラッシュバックしてもおかしくはなかったと思いますが、
最後を読み切るまで、読了後ですらつらい思いやくやしさや不甲斐なさのような、
負の感情がフラッシュバックすることはありませんでした。

むしろ気になるのは、冒頭から仕掛けられたエロティシズムというにはあまりにも明け透けな言葉遊びです。
帯のことばに身構えていたからだと心が、見事に肩透かしにあいました。
「これ、絶対あとからそういう方向に行くよね?」
と確信する言葉遊びの期待は、裏切られません。

他にも、あまりにも肯定的に、自然に、「せいの輝き」が要所にちりばめられています。
そこに、著者のあたたかいお人柄が透け見えるような気がして、なんとも愉快なような、
深々と頭を垂れたくなるような気持ちがしています。

そしてもうひとつ、小川氏の配慮を感じたのは、主人公の病名でした。

話の舞台は、瀬戸内の島にある「ホスピス」。
病院ではないからなのか。
最後まで、主人公の「正式な病名」が本の中で明確に書かれることはありません。
最初に記されるのは、「ステージ4」という表現。
「ホスピス」や「ステージ」という表現から、すでに明白なのですけれども、
病名が出てくるのは、物語も中盤に差し掛かるころです。
そして、終盤でやっと体のどこに病巣があったのかがわかるのでした。

こちらの心の準備ができるまで、待ってくれたような。
「死」の話の予感にこわばって、かまえている心が、
主人公自身が自分のからだと心の状況を受け入れていく過程とともに、
見事にほぐされていくかのようでした。
結果、主人公の正式な病名が「わかる」ころには、
気がつくとあおましいろの心も準備が整っていたのでした。

死に際の描かれたものがたりは、きっとこれからも得意にはならないと思います。
でも、気になるキーワードの「私ね、死って、最大級の・・・」というセリフを読んだとき、
そうだったらいいな、と本気で思いました。
きっとそうに違いない、と思って、死ぬのを楽しみにするのもありなのかもしれないとすら、
思ったのでした。

まだ、人生最期に食べたいと思えるドラマチックなおやつは思い当たりません。
あえて言うなら、倉敷いちむらの和菓子かなぁ←。

倉敷いちむら 「節分の赤鬼、青鬼」
倉敷いちむら 和菓子「草餅」「桜鬼餅」「桜餅」
倉敷いちむら 「草餅」「桜鬼餅」「桜餅」

思いつかなくて、当り前。
人生の最期に食べたいおやつは、人生の最期に考えよう、ですよね。
それまで、よく生き、よく死ぬ準備をするのだ( ・`д・´)

最後まで読んでくださってありがとうございました。
これから読もうと思っている方にはワクワクを、
もう読まれた方には共感を感じてもらいたいこの頃の備忘録。
これからも少しずつ、興味を持っていただけるような項目建てが
・・・できますように←

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